★★★ 終わりなき 地獄の激痛物語 ★★★


 1999年〜  神様はもう信じない




そして私は入院した。

ちょっと暗い話が多かったので、休憩にこんな辛いことだけじゃなかったんだよ

というような話をこのページの後半に書きましょう。



念の為もう一度書きますが、この入院は一番気がかりだった
腺筋症の治療の為ではなく

腺筋症が発見される際に受けた検査で、たまたま見つかった他の病気の為の治療入院である。

よって、入院中は腺筋症の話も出ることはなかった。

そして、この病気が治って退院しても腺筋症は治ってはいないという事になる。

これがな
    ←で息止めて下さい→   とも言えぬ気持ちにさせる。




私は別に不摂生をしていたわけではない。子供頃から体は丈夫ではなかった。

ことに神経が過敏で弱かった。良く言えば繊細、悪く言えばド神経質。

中学の時に原因不明の病気で1年余りも苦しんだことがあった。

病院に行っても原因は分からない。


原因が分からない場合は、一般的に自律神経失調症と診断される。

自律神経失調症だから、どんな症状が出ても自律神経失調症である。


当時両親は、狐が憑いたと騒いだ。母は、揚げは食べたくないか?

爪は大丈夫か?などと言っていた。そして狐憑きとしてお祓いを受けた。

偶然だと思うが、一週間後・・・私の原因不明の病気は治った。

でも勘違いしないで欲しい。私は狐なんて憑いていない。


これは簡単に医学的に証明できる。気の病を狐憑きとしてお祓いした為

心の病気が消えただけのことである。病は気からである。



4人部屋にしてもらった私のベットは、廊下側の景色の見えない 落ち込みを

さらに落ち込ませるような窓も見えないところになった。

でも もう我侭は言わない。ココには私なんかより重い病気の人がいっぱいいる。

部屋を変えてもらった時に、もう2度と我侭は言わないと心に決めていた。



入院患者は、入院した時から暫くは、寝るのと検査が仕事になる。

外来でしていてもまた同じ検査をする。そしてさらに詳しい検査もする。



ここで、書かなくては進まない同室の女性達を紹介。


私の隣・病気=卵巣ガン<2回目手術後・抗がん剤治療>カッコの回数の意味は後で。
犬子様42歳(犬が大好きでいつも犬の話をしています。繰り返し同じジョークを言う)


私の向・病気=子宮内膜症<癒着がひどく紹介状をもって来院・手術予定>
豹子様30歳(誰もいなくてもしゃべっています。とにかくしゃべっています。超神経質)


斜左・病気=子宮頸ガン<3回目・手術後・抗がん剤治療>
若子30歳(元不良だったらしい。口調がそれっぽい。静かにしてほしいといつも願っている)


私・病気=子宮頸部高度異型上皮<手術予定>
(ほっておくと癌になることがある。昔は初期ガンと言われたが、現在は上皮ガンが初期の子宮ガンになる)

わたし 自称18歳(変り者。四六時中 阿川泰子のジャズを聴いている)



私の名字の近藤は、この病棟にもうひとりいたので、私は綺麗な方の近藤さんと呼ばれていた。

(別にもうひとりの近藤さんが汚かったわけではありません。(苦笑)


先にも書いたように、入院して暫くは、色んな検査をします。

慌しくそれは過ぎて行きました。

検査といっても病名は分かっているので、手術に備えて肺活量を測ったり

心電図を撮ったり・・・・そんなものです。


私はベットに寝ながらいろんなことを考えていた。

どうせ病気にかかってしまうなら、ひとつの病気が治ってからがいいのに・・・

病気には休憩が必要だとすごく思った。 しかし神様は休憩はくれなかった。



入院した日の夜、しばらくは寝れなかった。そして、神様の存在を考えた。

私は見放された。神様なんていない。これは何かの天罰なのだ。


小さい頃、カエルの口にストロー入れて遊んだり、お祭りで金魚すくいした金魚を

水道水に入れて死なせたり、赤トンボの羽根をちぎって飛ぶかどうか試したり

トカゲを車の通る所に置いてシッポがちぎれるのを見て楽しんだり

カブトムシの角に糸をくくり付けて振り回したり。

こういうことをしたツケが今まわってきたのだ。
あーーーーーーもういい!!!


もう神には何も頼まない。願わない。祈らない。賽銭入れない。

神なんて絶対にいないんだ。

もう神様なんて信じなーーーーーい!!!

繰り返しこんなことを思いながら、明け方近くになってようやく眠りについた。



次の日、なぜか私は変人になっていた。 

ベットの四隅に和紙に包んだ荒塩を置いて、何箇所も神社をまわってもらってきたお守りを

あちらこちらに置きまくった。枕には癌封じのタオル。その下にはお経本、手首には数珠。

ベットの頭を支える鉄の棒には、一番大きな神社でもらってきたお守りをぶら下げた。


その様子を見ていた向かいのベットの豹子ちゃんが、
やっぱりそういうことする?と言った。 

なに?と思ったら、これ見てと言う。豹子ちゃんの手の指には、ナント!5個以上のお守りが

ぶら下がっていた。 なーんだ同じ変人じゃん。




女だからこういうことをするのだろうか、不安がこういう行動にさせるのだろうか。

豹子ちゃんは私と同じ日に入院した人だ。少し太っている。大柄というのだろうか。

結婚して5歳になる子供さんも1人いた。

検査に一緒に行く時に、上着を持ってきてなかった豹子ちゃんは、少しだけ

外出許可をもらって買い物に出て行った。


検査は外来を通って行くので上着がないとパジャマで動き回ることになる。

いくら入院しているからと言って、女がパジャマで動き回るのはあまりいいものじゃない。

外来には男性患者もいるのである。



2時間くらいたって豹子ちゃんは帰ってきた。すごい外出時間だ。

隣には大きなデパートがある。てっきり私はそこに買いにいくのだとばかり思っていた。

いや、みんながそう思っていた。 話を聞くと隣のデパートに行って来たと言った。

上着をどれにするかすごく悩んでいたと言う。  な〜るほど。


そして、次の検査もあったので豹子ちゃんと一緒に行くことにした。

私は自分のベットで豹子ちゃんが検査に行く準備が終わるのを待っていた。

見なくとも見える距離である。そしてそれは起こった。



目が痛くなるほどの黄色の地に黒い模様。豹柄の偽毛皮であった。

私だけでなくみんながその豹柄の上着に目が釘付けになった。

と、そこへ豹子ちゃんの旦那さんが入ってきた。

夫婦だから何を言っても許されるのです。

おみゃ〜どういう趣味悪いもん買って来たんや〜びっくりしてまう。

え、うそ〜変〜?すごい悩んで買ったのにぃ・・・



そ、それ着ていくの?だってこれしかないからしょうがないよねぇ

同室のみんなが笑った。

たとえ一時でもいい、こういう病棟に響く笑い声はいいものだなぁと思った。

看護婦さんもそれに気付いて見に来た。 
うわっすっごい


本人はあっけらかんとしている。豹子ちゃんはそういう可愛い人なのです。

以後、退院するまで豹子ちゃんはその上着を嬉しそうに着ていたのであります。


つづく・・・